ときめきに支配されてまで

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5/25渋谷公演で目撃した、3人のベボベの今について

※旧ブログにて2018年5月31日に投稿していた記事の再掲です。

 

Base Ball Bear Tour『LIVE IN LIVE』@渋谷CLUB QUATTRO 2018/05/25

 

ベボベは、スリーピースバンドだ。正確には、スリーピースバンドに「なった」バンドだ。ギタリストの脱退を受けてもなお立ち止まることなく活動を続けてきた彼ら。これまでもフェスなどで何度かサポートなし3人体制でのステージはあったものの、私個人的には初めて観る、3人「だけ」のワンマンライブ。

渋谷クアトロはソールドアウト公演でもわりと余裕があるつくりなのだと思っていたのだけど、どうやらそれは勘違いだったようでそれはもう満員御礼。スタッフが必死に詰めるよう声をかけなければ全員入らないほどにギチギチのフロアに、チケットを余らせている人は1人もいないんじゃないかと思わされる。

 もともと単発のコンセプトライブとして行われていた『LIVE IN LIVE』、今回のツアーでは#Tour_LILとかいうお洒落な公式ハッシュタグがあるが、ファンの間でラブライブと呼ばれている時期なんかもあった。何を隠そう当時千葉の片田舎で女子高生をやっていた私は授業終わりに高速バスでこの渋谷クアトロに向かい、1曲目に間に合わず苦い思いをしたりした。

 そんなLILの今回のコンセプトが、満を辞しての「3ピースでのワンマンライブ」である。

 

全部の曲が、新しかった。

 

そりゃあ4人用に作られた曲を3人で演奏し直しているのだから、当然と言われてしまえばそれまでなのだけど。3人になって間もなかったサポートギターを携えての日比谷野音で、3人で演奏したアンコールは衝撃的すぎて今も覚えている。良いとか悪いとかではなく、視覚的にも音楽的にもとにかく「足らない」感覚があったからだ。ぽっかり空いた上手も、鳴っていたはずのギターの音も。

 それが今はどうだろう。ボーカル小出は下手側に、ベース関根は上手側に。そして真ん中にどっしり構えたドラム堀之内がよく見える。このバンドの「ギタリスト」小出が『真夏の条件』のイントロを鳴らした瞬間、「ギター俺!」と叫んだ瞬間、何も「足らなく」なんかないと直感的にわかった。3人仕様のアレンジでひとりひとりの仕事量は増えているはずなのに魅せつける演奏力、薄まるどころかより色濃くなる楽曲の煌めき。

 

4曲目、『ファンファーレがきこえる』。今この3人が歌う「人に告げず 遠くの町へ逃げたくもなるけれど/守らなきゃいけないものも/締め切りも 契約もある」という詞は重い。頑張れ負けるなと繰り返すような応援歌ではないけれど、まさに「大逆転」の真っ最中の彼らがこれを歌うから刺さるのだ。

 7曲目、『kodoku no synthesizer』。8曲目、『ラブ&ポップ』。ここで関根の新武器ことチャップマンスティックが登場。2年も黙って練習し続けたというギターとベースのいいとこ取りのようなこの楽器、演奏中の真剣な表情、尋常じゃない集中からも見た目よりよほど難しい楽器なのだろうと思う。サスペンダーが苦しいと舞台袖にハケた小出(女子としてはサスペンダー姿の小出も拝みたかった気持ちがあってごめん)を待つ間この不思議な楽器について語っていた関根の熱量が凄まじくて、3人になってもなお「新しい」彼らが眩しかった。

 9曲目『愛してる』。こんなに小出がコール&レスポンスを促すことが過去あっただろうか。「ギターロックを」「ギターポップを」……「ヒップホップは?」「じゃあシティポップは?」「メタルは?」と煽る小出に「愛してる」と答える私たち。ベボベのファンはジャンルレスに音楽が好きな人が多いなと普段から本当に思っているのだが、それはもちろんこのバンドがコラボや交流してきた膨大で良質な音楽を一緒に浴びてきたからなのだろう。最後には「Base Ball Bearを!」「愛してる!」。脚色抜きで大合唱と表現しても差し支えなかった。「俺も愛してるぜ!」は絶対カッコつけなんかじゃない。私たちと同じくらい、いやそれ以上にベボベを愛してるのはステージの上の3人だ。

 11曲目『The Cut』。毎度うますぎて笑ってしまう小出のラップパート、ほとんどギターレス。畳み掛けるリズム隊。近年はグルーヴ感を大事にしていると様々なところで口にしている彼らだが、それを肌で感じたのがこの曲。鳥肌ものだった。素人目から失礼すぎる表現なのだけど、「バンドうま!この人たち、楽器うま!」と思ったし、正直キャパ的にもベボベのファン!みたいな人ばかりが多い客層だったと思うのだが、例えば今日初めてベボベを見た人がここにいたとしたら一瞬で心臓持っていかれるなこれは、とも思ったのだった。

 14曲目『ドラマチック』。15曲目『BREEEEZE GIRL』。いわゆる定番曲、代表曲とも言える2曲。それを力強く、美しく、楽しそうに演奏している3人を見るだけで、もう心配など無用なのだ、この人たちは今が1番最高なのだ、この最高は更新されていくのだと実感。「いつの日か 思い出すのだろう/今年の夏のことを」。私はきっとこのライブを一生忘れないし、この先何度もこのライブを思い返す。そしてそんなライブはそう多くない。

 アンコールは堀之内渾身の雄叫びから始まるインディーズ時代の名曲『SUNSET-KI・RE・I』と『LOVE MATHEMATICS』。「公式にない恋がしたい」と数学に例えたこの曲だが、3がただの4-1じゃないことを証明してみせたライブの締めくくりに相応しい。

 

ベボベのワンマンライブには数え切れないほど通っている。それでも、いつだって「最新が最強で、最高」だ。それは新譜リリースのたびに思うことでもある。「おじさんになってから出会うフレッシュさは本当にときめく」と小出が言っていたが、もちろんファンだって同じことを感じている。一緒に歳を取っているなんて言ったらおこがましいかもしれないが、彼らについていけばこれからも私たちはずっとときめきを貰えるのだろう。

 終演後SEで『愛はおしゃれじゃない』が流れた。アンコールも終わり場内は明るくなる中、誰もいないステージに向かってフルコーラスの大合唱をする観客。ほとんどの人が台詞のような歌詞まで全て空で歌えるという状況に、幸せな空間に、ライブが終わったあとだというのに涙が出そうになった。3人にも聞こえていただろうか。

 

考えてみれば、ベボベの曲は「変化」を歌っているものが多い。『changes』「changes さぁ、変わってく 失うものもある/でもいいんです ひとつ頷き、駆け出す」、『逆バタフライ・エフェクト』「まだ あの日あの時ああしてたらって/祈り呪いが尽きなくても/いま、この時こうしてること「も」鳴り響いて」。2周目の青春というキャッチコピーは今のベボベを最も明確に表している。『short hair』から詞を拝借するならば、「変わり続ける君を、変わらず見ていたいよ」と私たちファンは思い続けてゆくのだ。